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2011年11月18日 (金)

■002.身近な“現実歪曲フィールド”

ウォルター・アイザックソンの公認伝記『スティーブ・ジョブズ』の[Ⅰ]だけ読み終わった。繰り返し登場する“現実歪曲フィールド(Reality Distortion Field)”がおかしかった。“現実歪曲フィールド”とは、Apple社の人がジョブズの言動に対して名付けたもので、「目的を実現するために現実をねじまげる」ことをいうらしい。たとえば、競合する製品の売上金額を知っていながら堂々と半分にして言うとか、既成の事実をなかったことにしてしまうとか……。多くの方が述べられているように、こうした特性は天才や優れたクリエーターにしばしば見られるのであって、ジョブズの専売特許ではないように思う。
有名なところでは、映画監督の黒澤明だ。「山をどかせ」とか「川の流れを逆にしろ」とか「写り込む民家をどかせ」とか無茶振り満載である。もっとも、クリエイティブな人間は多かれ少なかれ「現実をそのまま受け入れていたのでは、良い作品にならない」と信じているわけであって、芸術家の周囲には、こうした歪んだフィールドが沢山できているはずなのである。人気の高かったF1レーサー故アイルトン・セナも、度々コーナーで他車にからむ理由を聞かれて「他のクルマがいないものとして走ると、速く走れるんだ……」というようなことを述べている。
ところが、驚いたことに私の身近にも、最近この“現実歪曲フィールド”が出現したのである。
先日、母が電話しているところに行き当たった。電話の内容が聞こえてきたのだが、どうも様子が変なのである。実家はだいぶ前に隣の土地を買収(!)して小さな家を建てたのだが、そっちの家の住居表示が従来の家と異なっている。要は1番違いなのだ。どうもそれを替えさせようとしているらしいのだ(笑)。古くから住居表示の決まっている土地に家を建てたのだから、普通ならそれをそのまま使うだろう。実家も何年かそのままだったのだ。ところが、何かの都合で母は両方を同じにしたくなったらしい。そこで電話である。「こんな不便な状態をそのままにしておくなんて、行政の怠慢である……」といった類の耳を疑うようなフレーズの連発で、電話の向こうで担当者が涙目になっている様子が手に取るようにわかる。
そもそも住居表示は、土地の登記に使われる地番に比べれば、それほど大きな意味は無いともいえる。郵便が間違いなく届けばいいくらいのものだ。しかし、それを変えさせるという発想は、なかなかできないのではないだろうか。 ……結果的に、めでたく番地は付け替わったのである。
ジョブズのディストーション・フィールドは、もっとヘビメタ級のスゴイヤツだったと思うのだが、現実に負けない意志の強さを見せる必要があるときに、私もいつか使ってみたいと思う。

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