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2015年3月18日 (水)

■“知的自転車”のもう一つの意味

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ジョブズは、子供の頃見た「サイエンティフィック・アメリカン」がモトだと言っているが、アラン・ケイも同様のことを言っている。まぁ、この考え方は、特別珍しいものではないと思う。工学系の考え方をする人間は、少なからずこういう思っているはずだ。それは、「テクノロジーが人間の能力を拡張する」という考え方である。ジョブズは、Apple Ⅱ発売時にこれを「知的自転車」と表現した。オリジナルでは動物にかなわないが、自転車という道具を使えば、人間の移動効率は動物たちを超えることができる。

それで、私の最初の著書にも「21世紀への知的自転車」と副題に付けてあるのだが、当時の読者にどれだけ理解されたか、かなり疑問である(笑)。

私はこれまでこれを、たんにフィジカルな次元での話と考えていた。(*)

ところが、昨日、服部桂氏(朝日新聞社)のお話を伺っていて、そうではないと気づいたのである。当時の西海岸にいたヒッピー(のうちの能力の高い人たち……含ジョブズ)は、初期のオモチャのようなパソコンを見てドラッグ以上の「スッゲーものだ」と見破ったのではないか。ドラッグというのは意識を拡張するものとして知られている(私は未経験なので想像するしかない)が、パソコンがこれを超える革命的なもので、人間の(広義の)意識を拡張するに違いないと考えたのだろう。当時のパソコンは原始的なもので能力も低く、「世界中がつながる」と思えるようなシロモノではなかったが、「この能力を個人で持てれば、世界が変わる」と想像できたのだ。少なくともスティーブ・ジョブズには。

すでに「60年代米国西海岸IT起源説」のようなものがあることは承知している。東海岸(メインフレーム)対西海岸(パーソナル)の意識も背後に働いたかもしれない。カウンターカルチャ、オルタネティブの潮流がパーソナルなコンピュータのバックグラウンドにあったとするのは、かなり確かな気がする。

たとえばジョブズは、MacintoshにLocalTalkというネットワーク機能を標準で内蔵させた。能力的に低いものだったが、OS側に用意されたAppleTalkというプロトコルは(Ethernetのような)性能の良いハードウェアが出来れば、そのまま仲間に入れることができた。余談だが、私は、Apple社のこういうところ(仕様の定義のしかた)が好きである。M社では絶対に起こらないことだ(笑)。

ともかく、ジョブズのパソコンはネットワーク機能を持つことが必要だった。そしてその30年前の彼の直感は正しかった。IBM PCが(仕事で必要になったので?)標準でネットワーク機能を内蔵したのが何年ごろのことか知らないが、そういうマシンを革命的とは言わないのである。少なくともスティーブ・ジョブズの定義では、そーゆーことなのだ。彼は必要なモノは盛り込んだのである。少しぐらい値段が高くなったって、「そんなことは知るか!」という気持ちだったとしても、わからなくはない。

(*)つまり、当時は「知的自転車」と訳されていたので、「脳」の機能を拡張すると考えていた、ということ。実際に、ジョブズが使っていた言葉は「mind」だったと思う。(Steve Jobs 1995 では、bicycle of the mindと言っている)

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